230 研究領域の現状
永 田 央(准教授) (1998 年 3 月 16 日着任)
A -1).専門領域:有機化学,錯体化学
A -2).研究課題:
a). 多成分結合型配位子を用いた第一遷移金属錯体の構造と電気化学特性の制御 b).金属錯体と有機色素を用いた光励起電子移動系の開発と触媒反応への展開 c). 空間制御された大型有機分子内での電子・エネルギー移動
A -3).研究活動の概略と主な成果
a). これまでターピリジン・ビピリジンをメチレン鎖で結合した二成分結合型配位子を用いて単核錯体の合成を行ってき たが,これを複核錯体に拡張するため,ターピリジン二単位とフタラジンまたはピリダジンを結合した三成分結合型 二核化配位子を開発した。これらの配位子はコバルト ( I I ),ニッケル ( I I ) 塩と反応して期待通りの(等核)二核錯体 を形成したが,アニオン性架橋配位子に関して強い選択性があり,コバルトでは OH,ニッケルでは C l 架橋の錯体 だけが安定に単離できることがわかった。また,コバルト二核錯体は酸の添加により一方のコバルトが脱離して単核 錯体を与えることがわかった。
b).金属フタロシアニンを増感剤とするキノンの光還元反応について調べた。反応の初期速度はキノンの還元電位と相 関があり,光反応収率が光励起電子移動の効率に依存していることを示唆している。また,前年に合成した高溶解 性フタロシアニン骨格を利用して,フタロシアニン・キノンプール結合化合物の合成に成功した。
c). 分子の構造変化に伴う動的な電子・エネルギー移動の制御を目指して,ピンセット型ポルフィリン二量体を合成した。 ポルフィリンはピンセットの両端にそれぞれ位置しており,別の金属を挿入(または一方だけに金属挿入)することで, 分子の構造変化に伴う電子・エネルギー移動の効率変化を狙ったものである。トリメチレン鎖・ジエチレングリコー ル鎖で連結した分子を合成し,亜鉛・フリーベース二量体について励起エネルギー移動を調べた結果,定常状態で はスタック型二量体(キサンテン架橋),完全に伸長した二量体(trans- シクロヘキサンジアミン架橋)の中間の構造 をとっており,ジエチレングリコール連結体の方がポルフィリン間の距離が若干近いことがわかった。
B -7). 学会および社会的活動 学協会役員等
日本化学会東海支部代議員.(1999–2000). 学会の組織委員等
International Meeting “Photosynthesis in the Post-Genomic Era: Structure and Function of Photosystems” 組織委員 (2006).
T he.70
th
.Okazaki.C onference.“ Molecular.Mechanism.of.Photosynthetic.E nergy.C onversion:.T he.Present.R esearch.and.F uture. Prospects” .組織委員.(2010).
学会誌編集委員
Biochimica and Biophysica Acta, “Photosynthesis” Special Issue, Guest Editor (2006).
Photosynthesis Research, “Recent Perspectives of Photosystem II” Special Issue, Guest Editor (2008).
研究領域の現状 231 B -8). 大学での講義,客員
総合研究大学院大学物理科学研究科 ,.「基礎電子化学」,.2011年 7月.
B -10).競争的資金
科研費萌芽研究 ,.「無機ナノ粒子を包含する単一分子素子を用いた光合成物質変換」,.永田 央.(2003年 –2004年 ).
科研費特定領域研究(公募研究),.「デザインされた空孔を持つ有機分子と金属ナノ粒子の1:1複合体の調製」,. 永田 央. (2004年 –2005年 ).
科研費基盤研究 (C ),.「人工キノンプールを用いた光合成物質変換系の構築」,.永田 央.(2007年 –2009年 ).
科研費新学術領域研究(研究課題提案型),.「ヘテロ複核金属錯体を触媒として用いる二酸化炭素の資源化」,. 永田 央. (2009年 –2011年 ).
科研費基盤研究 (C ),.「時系列外部刺激を用いた分子機能の動的制御」,.永田 央.(2010 年 –2012 年 ).
C ). 研究活動の課題と展望
還元反応の触媒とするため第一遷移金属の新規錯体を探索しているが,三成分連結型配位子を用いた錯体で特異な反応 性が見られつつあり,今後の発展につながると期待している。成果欄で述べた単核錯体の選択的生成は,異種金属を近傍 に配置した複核錯体の合成に活用できるとともに,金属脱離後の空きサイトが残された金属イオンに対して有効な反応場と して機能することも期待できる(予備的成果がすでに得られている)。ただ,現在用いている三成分連結型配位子は,錯体の 構造が堅固であるため,金属・架橋アニオンに対する選り好みが激しい。触媒反応を円滑に行わせるためには,錯体上の配 位子交換や配位構造の変化も重要な要素となるため,もう少し自由度の高い錯体を設計していくことが今後追求すべき課題 である。
課題 (c) については,現状ではまだ平衡状態での平均構造を観測しているに過ぎないが,今後外部刺激による非平衡状態で の挙動を追求して行く予定である。分子運動を外部刺激によって積極的に制御できれば,新しい光・化学エネルギー変換 系への発展が可能であると期待している。